Japanesque Modern 「新日本様式」協議会
「新日本様式」100選の選考は、2006年9月5日、都立産業貿易センター「台東館」にて入念に行われました。選考にあたった福川伸次氏を座長とする評議会委員のコメントをご紹介します。
コシノジュンコ氏(ファッションデザイナー)
日本人は努力と工夫をしながら、ものを上手に作り出し、それを生活の中で役立て楽しむことを知っています。今後は、この活動が日本中にその良さを広めるきっかけになればいいと思います。
小泉誠氏(デザイナー)
選定されたリストをあらためて見ると、結果的には、いろんなものが多岐にわたって選ばれたなという印象です。審査に際しては、基本的に企業とか個人とかというスケールを超えた視点で見たいと思い、今回はそのような気持ちで審査にのぞみました。そうした心構えのもとに、日本の中で長い間にわたって培われた技術や精神を、現代の生活に生かしているものを選んでいきました。今回応募のなかには伝統的な手法や表現を表層的なところにだけこだわっているものも多く、最終的には、内面的なところまできちんとこだわりと思いを持ったものが選ばれたのではないかと思います。いろんな産地の動きとか、最先端技術、例えば三浦折りのような機能のきっかけになるものも非常に興味深かったですね。そして、その結果でてきた形態も大切だと思っています。優れた道具には美しさが伴うものだと思っています。美しく愛らしくなければ持続できないと思います。
杉山知之氏(デジタルハリウッド大学学長)
私は、現代日本人が未だ持つ日本の長い伝統と文化から受け継いできたであろう高い生活意識を満たすべく、新しい科学の知見や新技術を利用することにより創られたものに「新日本様式」を大いに感じた。100選の中には、「新日本様式」ということを、まったく意識せずに創られたものもあったであろうが、個々として吟味しても、また総体として見ても、「新日本様式」というベクトルを示すことができたのではないだろうか。
曽我部昌史氏(建築家)
新しい価値の創出につながる工夫と発見
[工夫と発見]
重要なのは、見えとしてのデザインではなくて、そのデザインの成り立ち方だ、ということが、審査を通じて確信したことでした。つまり、和風の素材が用いられていたりとか、和風の色やかたちになっていたりということでは、新日本様式とは呼べないわけです。日本が、日本のデザインとして主張すべきものには、デザインの前提となる考え方に新しさや工夫が感じられなければなりません。工夫と発見への頭の使い方に、新日本様式的クオリティが現れる、というわけです。
[新しい価値]
ただ小型化しているとか、これまでのものより高性能化している、というのも、日本的技術力の現れだとは思うけれど、新日本様式として評価するには、そういったソフィスティケーションを越えて、新しい価値を生み出しているようなものでなくてはならないと思います。(ちなみに、新しい価値の対極にあるのが付加価値)
[ちょっとの工夫]
頭の使い方の中でも、ちょっとした工夫が大きな効果を生む。そういうものが、新日本様式的には理想の姿だと思いました。季節で色の異なるおみくじや、無人駅にボランティアの駅長をやとう鉄道など、大してお金をかけるわけでもなければ、壮大な作業をこなさなければならないわけでもない、しかしながら、まったく新しい価値を生み出すような効果が生まれている。なるほど、と手を打ってしまうような感じ。
[美しいこと]
工夫や考え方の新しさが、重要な評価軸だったわけですが、本当であれば、その上で、持っている事自体が喜びに繋がるような、広い意味での美しさも併せ持っていなくてはなりません。しかしながら、今回選定したものの中には、その水準で努力の余地が残っているものも少なくないようでした。(別に、全てのものがシンプルモダンがいいっていうことでは、まったくありません)
日比野克彦氏(アーティスト、イラストレーター)
木の根と枝の先は繋がっている。伝統と先端の関係は共存する必須条件である。木の根だけでは生きられない。枝の先だけでは生きられない。互いに互いを意識しながら、成長し続けなければ全てが滅びてしまう。伝統を敬う精神を私たちは持ち得ているし、先端を望む夢も持っている。新日本様式とは、両者が繋がっているもののことを言うのではないだろうか。今回選ばれたものたちを俯瞰すると、そんな印象を受けた。
彦坂裕氏(建築家、環境デザイナー)
私の審査の考えは一点に絞られます。日本が基本的に育んできたものづくりの文化とでも言うべきものが、新しい時代の要求という枠組の中で、その考え方において、そして現物の立ち現れ方において斬新に表現されている、ということです。創意工夫、先端技術とのきめ細かい融合の仕方、自然の仕組みや素材の活用、記憶を呼び覚ます新規のデザイン的な展開、想像力を広げ未来への可能性を予感させる思考の世界性などがあることです。日本が競争力をもって将来へリレーできる資産の種とは、実際、そのようなものではないでしょうか?
福川伸次氏((財)機械産業記念事業財団 会長)
今回選定された53点は、産業機能と文化表現の統合を見事に実現している。これらは、新日本様式の基本思想であるたくみの心、もてなしの心、ふるまいの心が商品のコンセプト、デザイン、設計、機能、使い方などによく表れている。
具体的には、高い技術力を具現している、ものを大切にする、エネルギーを節約する、空間を有効に利用する、日本文化の伝統を活かしている、デザインが優れている、感性の充足を指向している、使い易さを高めている、自然との調和を図っている、といった特色が指摘できる。新日本様式の輪郭がかなり明らかになったと思う。